2024年度、当機構は強制労働に関する通報を17件受理しました。発生国の内訳は、マレーシア14件、シンガポール2件、中国1件となっています。こうした状況を踏まえ、当機構は強制労働に関する調査研究を実施することとし、その一環として、植田マネージャーがマレーシアを訪問しました。
現地では、以下の関係者および関係機関と面談を行いました。
アイシャ・ビディン氏(マレーシア国民大学名誉教授)
エドモンド・ボン・タイ・スーン氏(ASEAN政府間人権委員会マレーシア代表)
マレーシア人権委員会(Suruhanjaya Hak Asasi Manusia Malaysia, SUHAKAM)
マレーシア人事省(Ministry of Human Resources)、など
主なポイントは以下のとおりです。
- マレーシアでは、労働に関連する法律が16本以上制定されています。特に、雇用法(The Employment Act、1955年)、労使関係法(The Industrial Relations Act、1967年)、労働者社会保障法(Employees’ Social Security Act、1969年)、職業上の安全衛生法(Occupational Safety and Health Act、1994年)、内部通報者保護法(Whistleblower Protection Act、2010年)などが、強制労働との関係で重要な法律とされています。これらの法律は、近年、新型コロナ・パンデミックの影響で外国人労働者の労働環境が大きく悪化したことを受け、対応策としてさまざまな改定が行われました。
- マレーシアでは、すでに強制労働、人身売買、児童労働に関する国内行動計画が策定・実施されています(うち、強制労働および人身売買については現在レビュー中)。さらに、2025年4月には「ビジネスと人権に関する国内行動計画」の公表も予定されています。これらの行動計画の実効性は、5つの関係機関が合同で協議会を設置することで確保される予定です。
- 人権デューディリジェンスを義務化する法律については、現時点では「ビジネスと人権に関する国内行動計画」の公表準備段階にあり、政府内での本格的な検討には至っていません。
- 複数の日本メーカーと取引関係にあったカワグチ社が引き起こした人権侵害事案は、マレーシア国内で多くの主要メディアに取り上げられ、大きな注目を集めました。同様の人権問題は、他のサプライヤーにおいても発生するリスクがあるため、人権デューディリジェンスの重要性が一層高まっています。
本出張の成果を踏まえ、より詳細な調査報告書を別途公表する予定です。
以上。