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【報告】対話救済フォーラム2026(第1回)「対話救済を社会の隅々へーメディア・エンターテインメントと人権、中小企業の相談・通報窓口整備を中心に」を開催しました

2026年6月4日に、2026年度第1回の対話救済フォーラムは、対話救済を社会の隅々へ届けることを目指し、メディア・エンターテインメント業界における人権問題と中小企業の相談・通報窓口整備をテーマとして開催されました。

第一部では最初に、小林美奈弁護士(JaCERリーガルマネージャー、BHR Lawyers運営委員)が、2023年の旧ジャニーズ事務所問題等を受けて作成した「メディア・エンターテインメント業界における性的暴力・ハラスメント問題の理解と対話救済メカニズムの強化にかかる報告書」(本報告書)について説明しました。また、国連のビジネスと人権作業部会が、2023年に実施した訪日調査の報告書において、メディア・エンターテインメント業界における性的暴力・ハラスメントの問題が重要な人権課題として取り上げたことを報告しました。

続いて、菅原絵美氏(大阪経済法科大学教授、GCNJ理事、JaCER理事)が本報告書の目的について説明し、性的暴力・ハラスメントを国際人権の観点から理解することの重要性を強調しました。菅原氏は、ジェンダーに基づく暴力として広く捉え、暴力の連鎖性を止めることの必要性を指摘し、制度的な是正が不可欠であると述べました。

内田晴子氏(キリンホールディングス株式会社)は、スポンサー企業の立場から具体的な取り組みを紹介しました。内田氏は、旧ジャニーズ問題とフジテレビ問題に対して、企業として再発防止を含む人権尊重の取り組みが実施され、第三者から見て有効に機能していることが確認できた時点で取引再開を検討するというキリンホールディングス株式会社の方針を明らかにしました。また、2023年にキリングループ人権方針を改定し、バリューチェーン上のすべての関係者を巻き込んで人権尊重を推進することを明記したと報告しました。

ディスカッションでは、内田氏は、エンターテインメント業界の人権デューデリジェンスの難しさについて、調達先ではなくサービスであり、特殊性のある業界に対する人権デューデリジェンスの捉え方が最初は分からなかったと述べました。また、予防のための人権デューデリジェンスと救済が一体化して取り組めていない課題や、レバレッジの具体的な行使方法について手探りで進めている状況を説明しました。

菅原氏は、スポンサーの観点から3つのポイントを指摘しました。第一に、サービス、特に広告宣伝という取引関係における人権尊重の取り組みがこれまでプライオリティの高い課題として捉えられてこなかったこと、第二に、バリューチェーンの複雑さ(スポンサー企業広告会社メディア企業芸能事務所)の中でのデューデリジェンスの困難さ、第三に、取引終了ではなく働きかけを行う際の情報開示の重要性を挙げました。

救済窓口について、菅原氏はJaCERの取り組みを紹介し、約100社の会員企業に対するグリーバンスを受け付け、専門家による初期審査レポートを提供し、通報者との対話や事案解決への努力を働きかけていると説明しました。同じ問題について複数の会員企業宛ての通報を受けた場合、協働の取り組みが有効であると述べました。

内田氏は、JaCERの窓口を2年半利用した経験から、人権の専門家からのアドバイスを得られることに価値があると述べました。同じ通報内容で複数企業に通報がある場合、協力して解決に向けた方向性を見出せるとよいと述べ、今後のコレクティブ・アクションの可能性に期待を示しました。

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の取り組みについて、菅原氏は人権労働部会でのコレクティブ・アクションを紹介しました。約600社が参加するプラットフォームとして、メディア・エンターテインメント企業との対話を試みており、グループとして働きかけることで情報開示や対話が成立したと報告しました。

内田氏は、GCNJの人権労働部会に参加した経験から、他社と情報交換し、専門家や通報された側の意見を聞くことで、企業として考えなければならない問題を明確にできたと述べました。すぐに解決できない問題であるため、長い視点で取り組む必要があるとして、今後もこのような機会に参加したいと表明しました。

第二部では、高橋大祐氏(JaCER共同代表理事、BHR Lawyers運営委員)が司会を務め、中小企業の相談・通報対応窓口(グリーバンスメカニズム)整備の手引について議論が行われました。

高橋氏は、手引の概要を説明し、20265月にJaCERBHR Lawyersが公表した手引が、中小企業基本法が定める中小企業(製造業の場合、従業員数300人以下)を主な対象としていることを報告しました。手引は7つの章と3つの別紙から構成され、3つの重要原則(経営陣が率先して相談通報を歓迎する、不利益取扱いの禁止、秘密保持)と12の基本ステップを紹介していると説明しました。

大村恵実氏(弁護士、BHR Lawyers運営委員)は、企業の相談・通報対応における課題を3つの観点から説明しました。経営者にとっては「通報がなくてホッとするマインド」から「通報があることを歓迎するマインド」への転換が必要であり、利用する社員にとっては相談・通報したことが知られてしまう恐怖があり、担当者にとっては相談通報が増えることによる負担増加があると指摘しました。

斉藤一隆氏(中小企業家同友会全国協議会政策局長)は、中小企業の現状と課題を説明しました。日本の企業の99.8%が中小企業であり、民間事業所で働く人の約7割が中小企業で働いているという前提のもと、中小企業の多様性を考慮する必要があると述べました。具体的な課題として、小規模企業での人的制約、社員教育の必要性、「通報」という響きへの違和感、社内人間関係構築の困難さを挙げました。

氏家啓一氏(GCNJ BHRスペシャリスト)は、企業内メカニズムにおいて共通して弱くなりがちな点として、公正性と透明性を指摘しました。企業内メカニズムでは情報が企業側に偏り、独立した助言や支援へのアクセスが制度として用意されていないことが多いと説明しました。一方で、JaCERのような外部プラットフォーム型の救済窓口は、中立的な立場、多言語対応、専門家の接続などでこの弱さを補う仕組みを備えていると評価しました。

斉藤氏は、中同協で実施した経営実態アンケート(550社回答)の結果を紹介し、「社員の意見や不満を経営に反映させる仕組みがある」企業は37.6%であったと報告しました。興味深いことに、このような仕組みがある企業の方が黒字企業の割合が多く、赤字企業の割合が少ないという傾向が見られたと述べました。

氏家氏は、GCNJの「実効的なグリーバンスメカニズム構築に向けた実践ポイント集」(20259月公表)と今回の手引の相乗効果について説明しました。手引が仕組みを作る段階をガイドするのに対し、実践ポイント集は仕組みを生かす運用ガイドとして補完関係にあると位置づけました。

政府への期待について、氏家氏は202512月に改定されたビジネスと人権に関する行動計画で新たに加わった「能力構築」と「モニタリング」の2つの優先分野に注目し、企業グリーバンスメカニズム導入のバックアップや公共調達におけるモデル事例収集などを期待すると述べました。

大村氏は、救済へのアクセスが行動計画でおざなりにされていることに危機感を表明し、国としての人権保護義務の履行や政府から独立した人権機関の設置を期待すると述べました。また、人権デューデリジェンスと救済メカニズムの整備・運用が両輪で進む必要があることを政府からより強く発信してほしいと要望しました。

斉藤氏は、中小企業のリソースの限界を踏まえ、専門家派遣制度の政府補助、相談窓口・ヘルプデスクの充実、ワークショップ形式セミナーのきめ細かい開催など、政府や関係機関による伴走支援の充実を期待すると述べました。

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